1月19日
今日から、本格的な第二次ロケが始まった。昨日の夕方到着した出演者は、今朝いきなり風速20メートル近くの地吹雪のなかに放り出された。追い詰められた連合赤軍の9人が、警察の包囲網を脱出する場面だ。
群馬県妙義山の籠沢の近くで刑事から職務質問を受けた坂口らは、厳冬の妙義山を越えて、長野県へ脱出を試みる。それは地元の登山家でさえ尻込みするようなルートだった。この作品では場所の設定を変えているが、描かれる自然の厳しさに変わりはない。
目も開けていられないような地吹雪のなかを、出演者たちは「毛沢東語録」の一説を斉唱しながら進んだ。連合赤軍のメンバーが実際に「毛沢東語録」を斉唱したかどうかが問題なのではない。この映画は事実を再現することを目的としているのではなく、その事実を通してメッセージを伝えることにある。つまり、かつて、中国の革命家毛沢東に心酔した日本の若者たちがいて、その一部が連合赤軍を作った事実を、まさに映画的に表現するのが、この映画の目的だ。
撮影終了後、出演者たちはロケバスのなかで、放心状態に陥った。その光景を残そうとしたスチール・カメラが、たちまち結露したことでも、ロケバスの外の厳しさがわかろうというもの。だが、彼らは満足気でもあった。1972年日本で起きた《長征》の幻が、2007年1月、ここ鬼首に出現した。
いくら雪が少ないとはいえ、本格的な冬が始まった宮城県と山形・秋田県境の山の中で、「実録・連合赤軍」の最後の撮影は進む。