1月25日
「あさま山荘」攻防戦撮影第二日目は、大崎市消防団鳴子支団第六分団有志の協力により、雪が舞うなか、警察側の放水による攻撃、という設定で始まった。放水の威力は凄まじい。放水が始まると、瞬く間に視界が消える。そして、撃ち込まれる催涙弾や発煙筒。出演者だけではなく、監督、カメラ、照明、音響などのスタッフも全員がビショ濡れになり、咳き込んでの撮影だった。
氷点下10℃にもなる真冬の軽井沢で、この放水や催涙弾の攻撃にに連日耐えた連合赤軍メンバーの精神力に、今更ながら驚かされる。
実際に「あさま山荘」制圧に使われた催涙ガス弾は、3,126発。発煙筒326発、ゴム弾96発、現示球(照明弾の一種)83発、放水量15.85トン……。動員された警察官は、警視庁からの応援548名を含め1,635名。うち、山荘の攻撃部隊は382名、特殊装甲車9台、モンケンと呼ばれるビル解体用の鉄球を吊り下げた10トンクレーン車1台、高圧放水車4台だった。
たった5人の連合赤軍メンバーを相手に、これだけの物量を動員して警察側は何をしたかったのか? ……革命を主張し、銃を手にした彼らに、平和と民主主義を標榜する権力の人道主義なるものを宣伝したかったからだ。権力の善意?、不変?、強大さ……などを、視聴率89.7パーセントを記録したテレビを通して、アッピールしたかったからだ。
今日のもうひとつの重要な撮影シーンは、彼ら5人と管理人の妻・牟田泰子とのやりとりだった。このやりとりのなかにこそ、「あさま山荘」での事実と意味が描かれている。「あさま山荘」を内部から描いた映画は、これまでなかった。若松監督は、それを描きたかったからこそ、この映画を撮ろうと決意した。
明日は、いよいよ山荘を破壊した(もうすでにグチャグチャだが)警察の機動隊員が、彼らを制圧するシーンの撮影だ。そして、そのシーンで、この作品の撮影は終了する。