ラストカットは浅間にて
先週の半ば、実景の撮影に、群馬と長野に行って来ました。
氷の張った榛名湖の向こうにそびえる榛名山。
とがった輪郭を浮かび上がらせる妙義山。
そして、あさま山荘にたどりついた坂口らが最後に目にしたであろう
日本の風景、浅間山。
周囲の山々と異なり、そこだけ真っ白な雪に覆われた浅間山は、
夕焼けと、そして翌朝の朝焼けの中、静かにかすかな噴煙を上げ続けていました。
「よく、ここまで来たな」
妙義山から碓氷峠を越え、浅間山荘へと続く坂道を登りながら
監督がつぶやきました。
極寒の冬山を、軽装備で、食べ物もろくに食べず、
警察に追われるという極限状況の中、彼らをここまで突き動かしたものは何だったのか。
柔らかな陽ざしに包まれ、神々しいほどに美しく輝く浅間山を遠くに眺めながら、
あさま山荘での銃撃戦の果てに、この山を目にした彼らの胸中に思いを馳せました。
追い詰められていった彼らが見たであろう山々を、
それから35年後に、たどっていき、ついにこの映画の撮影は終了しました。
静かなラストカットとなりました。(A)