公開決定記念イベント「若松孝二・レトロスペクティブオールナイト」第一弾が、
11月17日(土)24時、テアトル新宿で始まりました。
冷え込み厳しい夜でしたが、テアトル新宿は、夜更けに駆けつけてくださった、
たくさんのお客さんの静かな熱気に包まれました。
イベントは、音楽を手がけたジム・オルークさんのアコースティックギターと
勝井祐二さんのバイオリンのセッションでスタート。
思いが寄り添って音となるような、そんな繊細なメロディがジムさんのギターか
ら流れ出し、
勝井さんのバイオリンが、優しく手探りしながらジムの音にさらに寄り添う。
会場の空気が、染められていくようでした。
本編でジムさんが奏でているアグレッシブなロックとはまた全然違った風合いの、
ジムさんと勝井さんの紡ぎ出す音に、酔いしれたのでした。
ジムさんのライブで静かな興奮に包まれた会場を次に満たしたのが、
竹藤佳世さんの「実録・連合赤軍」のメイキング「GUN AWAY! vol.1」の映像。
当日の夕方にできたばかりの新作です。
メイキングは東京国際映画祭での「作品賞」受賞シーンから始まり、
突如画面は、1年前のオーディション会場へ。
1ヶ月後に過酷な撮影現場にたたき込まれることになる役者さんたちとの、
最初の出会いが映し出されました。
クランクイン後に待っていたのは、恐ろしく張り詰めた現場の空気。
奥多摩でのロケを終え、軍事訓練を行う新倉ベースのロケ地へと乗り込んでいき
ます。
ぜひ、来月の第二弾をお楽しみに!
メイキング上映に続いて、中原昌也さん、森達也さん、ジム・オルークさん、
若松孝二監督によるトークが始まりました。
司会なし、という無謀にも思える試みでしたが、4人の個性が不協和音を奏でる
ジャムセッション、なんともスリリングなトークとなりました。
大変近い場所であの時代を生きた監督ならではの特権的な感じはなかったか。
90%の真実にこだわりすぎて監督の連合赤軍に対するスタンスが
はっきり見えなくなった可能性もあるのではないか。
オウムの若者も連合赤軍の兵士たちも、賢くてピュアで心優しい青年たち、この
類似性は何か。
宗教に答えを求める動きはあの当時はなかったのか。
いろいろな問いかけが4人の間を飛び交いました。
それぞれの問いかけに、お互いが十分に答えられず、もしかしたら、
お客さんの中に、フラストレーションを感じられた方もいらっしゃるかもしれま
せん。
しかし、お互いがスッキリと分かり合えたり、スムーズに意志を疎通できて
キャッチボールが進んでるように見えても、それは実はゴマカシかもしれない。
そう器用にはいかなくても、お互いが、もどかしく言葉をぶつけ合う。
伝わらない壁を感じる。
そして、答えは見つからない。
そこには予定調和はありません。
そんな、トークになりました。
イベント後半は「新宿マッド」と「水のないプール」の上映。
70年と82年、それぞれの時代の匂いが立ちこめる作品です。
そしてイベントは朝5時に終了しました。
劇場から地上に出ると、明け方の冷え切った空気が頬を刺しました。
足をお運びくださった皆さま、ありがとうございました。
来月の第二回は12月15日、ゲストに元赤軍派議長の塩見孝也さんや
元連合赤軍兵士の植垣康博さん、ロフトプラスワンの平野悠さんをお招きします。
司会は平岡正明さん。
ますます濃く、激しい不協和音になるかもしれません。
ライブはジム・オルークさんに加え、渚ようこさんも歌声を聞かせてくれます。
乞う、ご期待!