先週の土曜日、オールナイトイベント第二弾、テアトル新宿は、またまた熱気
に包まれました。
残念ながら、ビザが間に合わずに演奏できなかったジムさんがニューヨークか
ら送ってくれた声のメッセージでスタートしたオールナイト。平岡正明さんの、
味わいとネタが満載のトークを挟んで登場した渚ようこさんの歌声と高橋ピエー
ルさんのギターで、場内は1960年代、70年代の空気に満たされました。
「ママ ぼくでかける ぼくのお巡り殺しに ぼくのみんなを殺しに」(ゆけゆ
け二度目の処女)
演奏できなかったジムさんの分まで、渚さんは、何曲も歌い続けました。そし
て、ラストは、「実録・連合赤軍」の劇中歌としても使われている「ここは静か
な最前線」(天使の恍惚)
連合赤軍事件が明るみに出て、人々が衝撃を受けている頃に上映、劇中と同じ
ように現実でも交番が爆破される事件が起きて、大騒ぎになった作品の主題歌です。
ライブの後、「実録・連合赤軍」メイキングVol.2の上映を挟んで行われた
トークが、かなりの荒れ模様となりました。元赤軍派議長の塩見孝也さん、元連
合赤軍兵士の植垣康博さん、元ブントの平野悠さんらを迎えてのトークですか
ら、荒れないはずがなかったとも言えます。
元議長として、赤軍派の路線と、その後の連合赤軍事件の総括について語る塩
見さん、現場のコマンドとしての極限を語る植垣さん。その植垣さんに「へらへ
らするなよ!もう少しうなだれろよ!」、連合赤軍事件が、当時の新左翼活動家
にどれほどのショックとダメージを与えたかを考えてくれ、と思わず叫んだ平野
さん。
連合赤軍事件によって、それぞれがこの何十年もの間、背負い続けているもの。
決して総括しきれないもの。
会場からの問いかけなどもあり、予定時間を上回ってトークは続きました。
このトークの模様は、来年2月発売予定の書籍「実録・連合赤軍」(朝日新聞
社刊)に一部収録する予定です。
その後、ヒートアップした会場で、監督のレトロスペクティブ上映と続きました。
逃亡中の活動家集団をかくまう孤高のテロリストを描いた「セックスジャッ
ク」(1970)と、バブルに沸く日本で、かつて新宿騒乱で警官に頭を割られ、今
はひっそりと喫茶店を営む男性を描いた「われに撃つ用意あり」(1990)。
「われに撃つ用意あり」のラストは、エンドロールのバックに、ずっと1968年の
新宿騒乱のモノクロ映像が流れていきます。そして、その映像は、いつしかネオ
ン眩しい東京の夜景の中に埋もれていきます。何が変わったのか。何が見えなく
なったのか。何も変わっていない。そこにある。
そんな監督のまなざしを感じました。
冷え込みの厳しい早朝5時半に、イベントは終了しました。みなさんからのア
ンケートには「久しぶりに若松作品にひたれた」「トークバトル、おもしろかっ
た」「皆さん、とても情熱的で心にひめた思いのある人」といった言葉がありま
した。足を運んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
朝焼けを横目に、自転車を走らせながら、トークの時の数々の言葉と、「われ
に撃つ用意あり」の原田芳雄さん扮する主人公の静かな闘志を、思い出しまし
た。熱いイベントの一夜となりました。
さて、今月8日から14日まで、全国どこよりも先駆けての公開となった宮城県
大崎市のシネマリオーネ古川では、連日、さまざまな世代のお客さまが劇場に足
をお運びくださいました。9日の函館映画祭のクロージング上映にも、若松監督
と坂東國男役の大西信満さんが招かれ、上映後の討論会では、濃い討論が交わさ
れました。
そしていよいよ、今週末より、名古屋のシネマスコーレにて封切りです。
22日(土)の初日は、若松監督、ARATAさん(坂口弘役)、地曵豪さん(森恒
夫役)、並木愛枝さん(永田洋子役)、大西信満さん(坂東國男役)の舞台挨拶
もあります。
ぜひ、劇場に足をお運びください。