東京公開が近づき、慌ただしくなって参りました。イベントレポートが遅くな
り、すみません。
1月5日、車も人も少ないお正月の新宿でのオールナイトイベント第三弾。テ
アトル新宿は再び、濃密な空気に満たされました。
まず、壇上に上がったのは、シャンソン歌手の和田山奈緒さん。劇中、遠山さ
んと重信さんの別れのシーンで流れる「さくらんぼの実るころ」は、彼女の歌声
です。この歌は、パリ・コミューンの5月革命のとき、バリケードの中で若者た
ちによって口ずさまれたと言われています。この、愛しく哀しい歌声に、生きて
再び会うことのかなわなかった若い二人の姿がまぶたに浮かびました。
続いて、無事ビザを取得し来日したジム・オルークさんが、大友良英さんと、
第一回に出演した勝井祐二さんとのセッションを聴かせてくれました。大友さん
が指で弦をこすれば、ジムさんは木琴のバチで弦を揺らします。勝井さんのバイ
オリンの響きがそこにかぶさります。3人の音が、自由にくっついたり離れたり
しながらの個性的なセッションでした。1曲が終わった後も、思いがけず、もう
一曲のプレゼント。お客さんはたっぷりと堪能してくださったことでしょう。
続いて「実録・連合赤軍」のメイキングVol.3の上映。いよいよ、撮影は総括
のクライマックスに。仲間の総括は凄まじい勢いで進み、粛清された同志たちは
次々と現場を去っていきます。どこまでが現実でどこまでがお芝居なのか。どこ
までの意識が自分のもので、どこからが演じている役の意識なのか。山岳ベース
で繰り広げられる総括。それを時に怒り、時に励ましながら(ほとんどの場合、
怒り、の方でしたが)演出をつけていく監督。役者さんと監督とのガチンコの勝
負が続きました。
休憩を挟んで、トークが始まりました。今回は、右翼の鈴木邦男さんと、元右
翼で、今は非正規雇用の労働運動などに取り組む雨宮処凛さんがゲストです。司
会は今回も平岡正明さん。
「映画はやばかった。打ちのめされて、見終わった後、立ち上がれなかったくら
いショックだった」と、当時まだ生まれていなかった雨宮さんが、まず、映画の
感想を話しました。さらに、「自己批判、総括のシーンと、現代のネット上の自
傷グループの姿とが重なって見えた。革命が禁じられた21世紀、政治への回路が
絶たれた結果、自傷系に行き、同じような総括をしていることが、興味深かった
ですね」と話す一方で「これまで、あの当時の話を聞いていても、いまいちピン
とこなかったのが、本当に革命を起こせると確信できた激動の時代だったのだ、
とリアルに感じることができました」とコメント。
鈴木邦男さんは「映画を観ただけではわからなかったが、メイキングを見て、
ああやって監督は俳優を追いつめていたのか、と思いましたよ。これだけ役者さ
んが変わっていくのならば、これは映画なんだ!と騙して集めて、実際に革命が
できてしまうのでは(笑)」と話しました。
「プレカリアートの運動(今の非正規雇用の若者たちの労働運動)は、思想では
ないです。60年代70年代は思想から入ってますよね。でも、今の運動は、本当に
食えない、生きていけない、という怒りから来ていますから。それが大きな違い
かな」と話す雨宮さんに「特別変わった人間ではない。普通に正義感から怒りに
駆り立てられてやったんです。あなたがあの時代にいれば、間違いなくやってま
すよ」と鈴木さん。
話は、監督のガサ入れの事にまで及び、トークは盛り上がりました。「私も、
よど号の人と北朝鮮で会った後、ガサ入れされましたよ。しかも、有本さんの拉
致事件がらみってことで。当時私8歳ですよ。関係してるわけないじゃないです
か」と雨宮さんの思いがけないエピソードも。
濃密なトークの後、65年のベルリン国際映画祭で上映され「国辱映画」と大騒
ぎになった『壁の中の秘事』と、足立正生さんがモデルだという『餌食』の2本
立てと続きました。
前者は、終わらない戦後、団地の窒息しそうな空間、爆発しそうな浪人生。
後者、は、レゲエをひっさげて日本へ帰ってきた男性を待ち受けていた、高度
成長に浮かれる日本。
「革命」を「音楽」に置き換えて作ったのだ、と監督が語るこの作品を貫くの
は、陽気に哀しい、乾いたレゲエのサウンド。どちらも、衝撃のラストです。
今回は、全体に時間が長く、終了したのはすでに6時近く。東の空が明るんで
いました。
空気の中に、どこか春のなま暖かさを感じました。
いよいよ次回がラストです。皆さま、ぜひテアトル新宿でお会いしましょう!