2月14日
同じ志の者
「実録・連合赤軍」の今日の上映は、クーダムにある DELPHI劇場で行われました。その上映を終え、館外で観客の感想を聞いているときです。黒いコートを着た男が、若松監督に話しかけてきました。彼は、かつてのドイツ赤軍、バーダー&マインホフ・グループの活動家でした。刑期を終え、現在は貧しい子供たちや失業者を支援する社会活動をしているそうです。
「私には、この映画が非常に重く胸に突き刺さりました。若い世代には、この映画が表すものを、ちゃんと受け止めて欲しい。そして、それらを伝えてゆくのも、私たちの義務だと思います」
事情があって、現時点では彼の顔も名前も明らかにできませんが、そこには、日本の連合赤軍の兵士たちと同じ時代を闘った者が持つ、風貌がありました。
ドイツでドイツ赤軍をテーマにしたドキュメンタリー作品を撮った、アンドレアス・パウエル監督とも、再会しました。若松監督は、昨年秋、パウエル監督の作品が日本で上映されたとき、一度トークショーをしています。彼はいま、ドイツ赤軍の始まりを描くドラマ・フィルムを制作しようとしています。その作品が完成したら、日本に持ってゆくから必ず観てください、とパウエル監督は言いました。若松監督とパウエル監督は、親子ほども年が離れていますし、育った文化も異なりますが、あの頃の青年たちが突きつけた問題を、彼らを通して描こうとする姿勢に違いはありません。
映画「実録・連合赤軍」には、どこかに同じ想いを持つ者たちが集まってきます。
フィルム・マーケットと呼ばれる商談場が、1860年に造られた商工会議所で開かれていました。壮麗な建物の中には、各国映画の展示ブースがあります。ベルリン映画祭は、様々な国の様々な作品が上映される映画祭典だけではなく、映画の配給などを巡るビジネスの場でもあります。壮麗な建物の中で繰り広げられるのは、この映画祭のあまり知られていない一面です。