本日2日、21時より香港島にあるCity Hall Theaterに於いて、「キャタピラー」のアジアプレミアとなる上映があります。日本での上映より早く観られるとあって、チケットは早くもソールドアウトになってしまったようです。
昼には、映画祭の公式ランチがあり、ベルリンでも御一緒した大森立嗣監督と再会しました。
そしていよいよアジアプレミアとなる上映です。400席の客席は早々に埋まってしまい、立ち見がでるほどでした。香港映画祭は、全体的に幅広い観客層らしいのですが、「キャタピラー」に関しては若い方カップル、特に若い女性の姿が目立ちました。
上映前に香港映画祭のディレクターのジェイコブさんに紹介され、監督が登壇し、「この映画を観て、戦争というものについて考えてほしい」と挨拶をすると、客席からは拍手が巻き起こりました。
上映が終り明かりが灯ると、割れんばかりの拍手に会場が包まれ、監督によるQ&Aが行われました。日本人の若い女性からは「今まで日本映画で描かれる日本の軍人は優しく、中国映画では鬼のように描かれていて違和感があったが、キャタピラーを観てやっと2つのイメージが重なった。そしてこれからは戦争というものを自分なりに考えていかなくてはならないと思った。」という感想がありました。
現地の方からは「クマさんは作品の中でどういう役割を果たしているのか?」、「国家権力が一般市民の日常生活に入り込み、人を狂わせていく。その影響はどう考えたのか?」、「右翼に脅しを受けなかったか?」、「軍神と言われていた人々は、戦後どのような生活を送ったのか?」など、作品の内容から、監督がどう戦争を受け止めているのかなど多岐に渡る質問が多くありました。監督は、ひとつひとつの質問に答えながら、自分の気持ち、反戦というメッセージが伝わるようにお答えしており、会場の雰囲気は熱気あふれるものになりました。Q&Aが終わり、会場をあとにする監督の姿に大きな拍手が送られました。
会場前にでると、あっという間に監督の周りに人だかりができました。目に涙を浮かべている女性など、胸がいっぱいの方が多かったようです。中には前作「実録連合赤軍あさま山荘への道程」のポスターを持参し、サインをしてもらう熱心なファンの方や、「1968年に中国であなたの作品を初めて観たが、今回の作品も素晴らしかった」という年配のファンの方もいらっしゃいました。
そしてディレクターのジェイコブさんによると、「長い間、香港映画祭に関わっているが、舞台挨拶、Q&Aが終り監督を見送るのに、観客が拍手をしているのを初めて見た!」と驚いていらっしゃいました。
拍手はしない、エンドロールが始まったら席を立つ、Q&Aで監督が帰る時も我先にと帰っていくのが普通の香港では、大変珍しい光景だったようで、映画祭のスタッフの方々はとても驚いていました。
香港映画祭では例年、戦争、紛争、貧困などの多くの社会問題を一人一人が自分達の問題として考えられるような作品を多く上映しているそうです。監督の「戦争を忘れてはいけない」という思いと、映画祭の気持ちが、香港の観客の皆さんに伝わったのだと思います。