クランクイン!2・26の青年将校ら現る
4月1日、新潟県魚沼市六日町にて、ファーストカットの撮影が行われた。
1936年2月、首都東京を震撼させた青年将校らとその下士官たちの決起、
いわゆる2・26事件、ときの首相ら重臣を襲撃、殺害したクーデター未遂事件である。
その日、東京は大雪に見舞われていた。
ザックザックと雪を踏みしめて進む多数の軍靴。
その将校らの姿を見つめる、一人の少年の姿があった。大きく見開かれる少年の目…。
当時11歳であった三島少年の瞳に、脳裡に、
将校たちの決起はどのように焼き付けられたのだろう…。
という感慨にひたる間もなく、終始現場に響き渡る監督の怒号…。
ああ、若松組が再び始動したんだなあ、という別の感慨にひたる。
六日町に到着後すぐ、撮影の辻智彦、制作の大日方教史とともに
ロケハンに出かけた若松監督だったが、すぐにロケ地を決めて戻ってくる。
エキストラの皆さんに集合して頂く予定の13時には、
すでに監督のエンジンはフル回転になっていた。
すぐにでもロケに出発したいけれども、まだ揃わない青年将校たちのフル装備…。
「何モタモタしてるんだ!日が暮れるぞ!」
「明日になるぞ!早くしろ!(いえ、まだ13時15分ですが…)」
窓の外から監督の怒鳴り声が聞こえて来る中、
衣装部、演出部、エキストラの皆さんの総力を結集し、汗だくになって、
大急ぎでゲートルを巻き、コートを着込み、水筒と背嚢を背負い、
銃弾のベルトを締めていく。
みるみるうちに、部屋の中は旧陸軍の青年将校たちで溢れかえっていった。
監督の怒号は、監督流の現場演出術とも言える。
監督の怒鳴り声で現場は締まり、スタッフも出演者も誰もが1点に集中するからだ。
その集中力は長くは続かない。
だから監督は早撮りだ。
現場が一点に集中したその瞬間を、キャメラに素早く切り取っていくのだ。
というわけで、撮影は、あっという間に終了した。
緊張で少し頬を赤らめながら、足早に過ぎゆく将校らを
懸命に見つめる少年役の尾崎康介君。
わざとらしい演技のない、その初々しさが、胸に強く残ったワンシーンとなった。
エキストラにご協力くださった皆さま、魚沼市のFCの皆さま、
本当にありがとうございました。