終わった。
気付いたら、全てが終わっていた。
普段は静かな須賀利の集落が
熱気に包まれざわめいていた日々。
東京でのクランクインから始まった怒涛の撮影の日々は終わりを告げた。
中本の血の滾りを見せていた男たちの
狂おしいほどの眼差しは、もうどこにもない。
男たちの生き死にを見つめるオリュウの
時空を越えた眼差しも、もはや、どこかへ消えてしまった。
クランクアップ後、静まりかえった集落を見渡して思った。
あれは、夢か幻だったのか…と。
いや、それらは全て、キャメラにしっかりと焼き付けられた。
これから編集され、音付けされるのを待ちながら、
いきいきと息づいているのだ。
高岡蒼佑演じる三好。
高良健吾演じる半蔵。
染谷将太演じる達男。
寺島しのぶ演じる産婆のオリュウは、
彼らを親より先にその手に抱き、
路地の者らが背負わされたものを見つめ、
生きよ、生きよと祈り続けてきた。
生きるとは、何と理不尽で美しくて暴力的で
刹那的で永遠に続く営みであることか。
須賀利の集落の、美しくも寂しげな佇まいが
役者たちの創り出す世界観に深みを与える。
紀州の深い緑の山と、広がる入り江に縁取られた小さな集落。
この美しく静かな路地の風景の中で、
新たなる「千年の愉楽」が誕生した。
怒涛の11日間を終え、静けさを取り戻した集落の中で
目の前から、オリュウや半蔵が去ってしまった寂しさと
1つの世界が誕生したのだという実感に包まれていた。
ロケ中、全くブログが更新できず、申し訳ありませんでした。
これまでの若松組と同じく、バタバタの現場でしたが、
多くの方たちのご協力があったからこそ無事に終えることができました。
何より、東紀州フィルムコミッションの皆さま、
尾鷲市の皆さま、紀北町の皆さま、須賀利のおんばんの会の皆さま、
須賀利の皆さまの日々のご協力と暖かいご支援があったからこそ
わずか11日間というスピードで集中して撮影を進めることができました。
毎日の暖かい励ましの声やご支援の数々、
心から感謝申し上げます。
本当に、ありがとうございました。
映画が完成するまで、これから長い道のりが待っています。
編集、音入れ、音楽作り、ダビング……
映画の心臓とも言うべき大切な作業を経て
1つの作品が生まれます。
どうぞ、楽しみにお待ちください。