昨日、曇り空のリヨン駅を出発した新幹線は
すぐさま緑豊かな小麦畑の中を突き進み、
みるみる灰色の空が青く晴れ渡り、
乾燥した白っぽい土くれが現れ、
赤い瓦屋根の街中を通り抜け、
いつしか、地中海の碧さが目に眩しい
南仏の沿岸を走っていた。
黙って車窓の風景を見つめる若松監督。
「41年ぶりのカンヌですね。」と声をかけると
「ああ、同じ海の碧さだね」とうなずく。
「41年前、カンヌ映画祭を終えた僕は、
そのままパレスチナに渡ったんだなあ」
その監督が、今、「三島由紀夫と若者たち」を描いた作品を世に送り出し
再びカンヌへと招かれた。
フランス及び世界のメディアや関係者たちが注目するのは
若松孝二の、あの時代の描き方、三島のイデオロギーや生き様に対する
監督の眼差しであろう。
午後2時。予定通りカンヌ駅に到着。
南仏の陽射しが眩しいカンヌ、
普段は静かな田舎町が、映画を愛する世界中の人たちを迎え入れ
一種の不思議な熱気に包まれていた。
夜、井浦新がニース空港に到着し、カンヌ入り。
明日は現地の関係者、海外の映画関係者らとのミーティングを重ねる一日。
合間に日本メディアの取材も。
そしていよいよ、明後日、公式上映の幕が開く。