本日、全国19のスクリーンにて、
「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」が封切りされた。
本当の意味で、作品が一人歩きを始めたのである。
記念すべきこの新しい一日、
テアトル新宿、ユーロスペース(渋谷)、ジャック&ベティ(横浜)と
3つの劇場にて、監督とキャストの舞台挨拶が行われた。
テアトル新宿では、防衛庁の東部総監室に立て籠もった5名全員が
楯の会の制服に身を包んで集結した。
制服には、撮影当時の血糊の汚れがついたまま。
久しぶりに袖を通すと、撮影の時の生々しい記憶が蘇ってくる、とキャストたちは言う。
しかし、撮影中に存在していた、猛々しくも繊細な若者たちの面影はそこにはない。
バルコニーの上で絶叫していた三島由紀夫の面影もない。
今を生きる彼らの顔がそこにある。
しかし、彼らが心を削るようにして表現した、三島由紀夫や森田必勝らは
確かにスクリーンの中でいきいきと息づいているのだ。
そして、彼らがいきいきと生きていた、そのスクリーンの世界は
もはや映画を観に来てくださったお客様一人一人のものなのだと実感する。
壇上に並んだキャストと監督たちは
それぞれの言葉で、作品への思いを語り、
来場してくださった皆さまへの感謝の気持ちを語った。
上映後の舞台挨拶では、客席から質問の声も。
三島を演じた井浦新は、その現場について聞かれ
こう語った。
「三島さんという強烈な存在をどう演じるのか。
最初はプレッシャー以外の何ものでもなかったが、
しかし、ひとたび現場に入れば、キャストスタッフ全員で
若松監督にくらいついていくしかなかった」
三島との共通点について聞かれると、
「イデオロギー的な部分では、理解しかねる部分も当然あったが
しかし、日本の伝統的なものを愛し、文化を慈しむという
その感性は、自分と非常に共通した部分がある」と語った。
本作が映画初出演という森田必勝役の満島真之介は、
「25歳の若さで腹を切るという精神は、
一体どのようなものなのか、本当に最初は見当もつかなかった。
でも、日々、これまで自分が出会ってきた人、経験してきた物事を思い出しながら
監督にめちゃくちゃに怒られながら、心が折れないように、
精一杯、新さんの背中を見つめて、ついていく現場だった。
でも、今、スクリーンを見ながら、あらゆる事が腑に落ちた。
時代は変われど、若い人間が持つ爆発的なエネルギーは変わらないはず。
今日から、自分も新しい一歩を歩いて行きたい」
若松監督は、若い俳優たちから気迫の演技を引き出した演出について聞かれ、
「何も特別な事はしてないんですよ。
再現ドラマを作るつもりはないですから。
新君の三島、満島君の森田、それぞれの、古賀、小賀、小川を
やってくれればいいのであって。
それでも、カンヌの上映では、1000名以上の入る大劇場が超満員で
面白くなければ次々とお客が出て行く映画祭で、
最後まで誰も出て行かずに見てくれて、最後は拍手が起きたので
ああ、ちゃんと満足してもらえるものができたんだな、と思ってる。
みんなも、面白かったと思ったら、ぜひ、まわりの人に勧めてください。
僕も、まだもう少し映画を撮りたいんで、そのために、なんとかお願いします」
と、ユーモアを交えて語り、会場の笑いを誘っていた。
テアトル新宿に続き、ユーロスペースでの舞台挨拶を終え、
そして、夕方には、横浜のジャック&ベティへ。
舞台挨拶を待つ間は、公式ブックにサインを書き続ける。
各劇場で、公式ブックは飛ぶように売れた。
監督や井浦、満島らのインタビューには、今回の撮影にまつわる
様々な興味深いエピソードも満載の公式ブック。
三島に関する各界の人々の寄稿も読み応えあり。
ぜひ、お手にとって頂きたい。
最後にジャック&ベティで2回の舞台挨拶を終え、
目まぐるしかった初日を終えた。
ちょうど1年ちょっと前に、怒涛のロケを終えた、あの作品が
こうして、ヨチヨチ歩きではあるけれど、19のスクリーンで
一人歩きを始めたのだ。
たくさんの人たちの手を借りて、1つの映画作品が、この世の中に誕生した
その新しい一日を、共に過ごしてくださった皆さま、ありがとうございました。