思い出す。
ちょうど一年前の今頃は、三重県尾鷲市の須賀利で
めまいがするような濃密な空間の中で
無我夢中で「千年の愉楽」のロケを進めていたことを。
晴れると、尾鷲湾に太陽が照りつけて、
路地の斜面にも陽射しが降り注いで、
暑いほどだった。
ナイトシーンの撮影の必要がある時以外は
撮影はたいてい、夕方4時頃には終わった。
尾鷲湾の向こうに日が沈むと
すうっと気温が下がって肌寒くなる。
翌日のスケジュールを確認し、衣裳を確認し終わると、
真っ暗な海沿いの道、集落に2軒だけある民宿まで
歩いて帰ったものだった。
監督は、毎日毎日、階段だらけの路地の中で
上がったり降りたりを繰り返しながら
新しいシーンを生み出し続けていた。
地元の婦人会「おんばんの会」が作ってくれるお弁当は
イカの刺身やら、焼き牡蠣やらまであって
ロケ最中のお楽しみだった。
監督、夢中で走った日々でしたね。
もうすぐ、この作品の公開が始まりますよ。