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初日、満員御礼!飛び立った「千年の愉楽」

3月9日、雲一つない快晴。
晴れ男の若松孝二の、最後の初日に相応しい青空。

最後の初日。この言葉を噛みしめる。
終わるのである。
そして、始まるのである。

テアトル新宿初日、立ち見席含めて完売御礼。
マスコミがロビーに溢れかえる。
今日は、ついに、達男役の染谷将太も駆け付け
中本の男たち勢揃いの舞台挨拶とトークである。

初日という事は、今日から走り始めるという事だ。
あっという間の数週間の始まりである。

ロビーでのマスコミの囲み取材を終え、上映終了を待つ。
エンドロールの歌が静かに消え、一瞬静まった劇場内に
拍手が沸き上がった。
壇上に並んだ6人は、取り囲むマスコミを前にしつつも
いつもの若松組らしくMCなしの
自然発生的なトークセッションを開始した。

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「1000年前の風景、100年前の物語、今を生きる我々の肉体
 歴史を刻んできた須賀利の風景、あらゆるものが、透かし模様になって
 重なっている。
 それは、映画には登場してこないが、彦之介をさらに遡った
 路地の人間たちの生き死に、あるいは芳雄さんの存在などもはっきりと感じる。
 映っていない事が、画面の向こう側にある事の大切さを刻むべく
 若松監督は、常に挑んでいたと思う」と佐野史郎が、言葉を切り出す。

「どんな舞台挨拶でも、ネクタイなどして来る事はなかったけれど
 今回の『千年の愉楽』初日の劇場は、僕にとっての聖域なのです」と話す
ネクタイとスーツ姿の井浦新の首には
監督からの形見分けのマフラーが巻かれていた。

「作品は、生まれたら、生まれっぱなし。若松さんの「千年の愉楽」
 さらには、若松さんの全作品は永遠に走り続ける。
 僕はこのロケの5年前に連合赤軍のオーディションに行き
 一言も話す前に「大体分かった」と帰されて、落とされた。
 理由は「ちょっとこぎれいすぎた」。どうしても出たかった若松組の現場、
 5年越しの願いが叶って参加出来た事が、今は本当に嬉しい」と染谷将太。

「この作品には、若松監督の全てが詰まっている。
 現場で演じながら、全てを包み込む眼差しのオリュウは
 監督なんじゃないか、と思う瞬間がたくさんあった」と寺島しのぶが語った。

続いて移動したキネカ大森も満員御礼。

若松組恒例ティーチインでは、客席から
「風景の中に時折映る現代のディテール
衣裳のそれぞれのありようなどが、
時代のファンタジーとして見えた。衣裳の意図は?」
「若松孝二の、ここが凄い!というところは?」
といった質問が出た。

原作には、ある時代設定がはっきりしているけれども
歴史を刻んできた「今」の風景の中で「今」演じる以上
それは、1000年前でもなく100年前でもなく今でもなく
あらゆる時間の流れが積み重ねてきたものが積み重なっているのだという事。
衣裳の中に、監督が込めた、原田芳雄さんの存在への眼差しなどを
それぞれのキャストが自分の言葉で語った。

監督についても
「常に、物事は1つの見方に限定しない。右でも左でも暴力でもエロスでもなく
 実は非常にプレーンな眼差しをいつも持っていた」(佐野史郎)
「過去も未来もない、常に「今」があって、そこから未来も過去も語る。
 75歳という年齢になってなお、「今」を常に生きていた」(高良健吾)
「実は、とってもずるいところもあって、でもそこをも含めて
 愛情深く、社会的に弱い人への眼差しは優しく、強いモノにはキバをむく
 その姿勢にはブレがなかった」(井浦新)
「人を、ひとりぼっちにしない人」(高岡蒼佑)
「役者にとって、とても大切な事を気付かせてくれた。
 自分が演じる上で、自分に関わる事、映る事には全て、自分で責任を持て、と。
 ラクな現場が多い中で、若松監督に教わった事は忘れずにいたい」(寺島しのぶ)
 
そして、本日最後の劇場、横浜ジャック&ベティへ。

「未来の子どもたちへのメッセージかな、と思いました。
 どんな命も、そのままでいい、どれも平等なんだ、という
 生まれて来る子への希望だと思えました」
「これはとても仏教的な映画であり、根底にずっと
 浄土真宗があり、オリュウは弥勒さまに見えました。
 全てのありようを受け止める眼差しを、作品の中に感じました」

ひとりひとりの中で、「千年の愉楽」が自由にうまれた事を感じ
キャストたちが紡ぎ出す1つ1つを、愉しんで愛おしんでいた
若松孝二の眼差しが、フィルムに焼き付けられている事を感じた。

そして、ここジャック&ベティにてサプライズゲストが。
客席の中に座っていたのは大西信満。
「実録・連合赤軍」で坂東國男を演じ、「キャタピラー」で
寺島しのぶ演じるシゲ子の夫、手足を失った帰還兵を演じた若松組常連俳優だ。

「若松孝二の現場で最も怒られ、檄を浴び、愛情を受け、
 ほとんど付き人のように全幅の信頼をおかれていた大西君、前に来て」と
井浦新に呼び出され、大西も壇上に上がる。
が、いつもムードメーカーで茶目っ気ある毒舌の大西に、いつものキレがない。
「今……この作品、自分は初見でした。本当に……
 僕は、今まで、この作品にほんの少ししか参加できなかった事を
 悔しいという思いしかなかった。でも、作品を見て…
 今は、この作品に、少しでも関われて本当に良かったと思ってます……
 皆さん、本当におめでとうございます」と、キャストに向かって頭を下げた。

実は、この作品のクランクイン直前に
大西は足を大怪我して入院しており、
監督からのオファーを受けるも、地方ロケに動ける状態になかった。
そんな大西に、せめてワンシーンだけでもと、
監督は都内ロケで済む、男Aの役を任せた。

飲み屋街を歩く三好の視線がぼやけて来て、
向こうから歩いて来る男と肩がぶつかる。
「気ィつけんかい!」と一喝される。
そのわずか数秒のシーンに出て来る通行人の男が、大西である。

いきなりのご指名に汗をかきつつ、トークに加わる大西。
このライブ感が、若松組であった。
若松孝二がつくりだした、現在進行形の「今」だった。

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作品を、お客さまのところに届けるために、
1人でも多くのお客さまに存在を知って貰うために
キャスト一人一人が、その思いだけで全力で走ってくれた事を思う。
何度も、「観てください」
「この作品の存在を一人でも多くの人に知らせてください」と
頭を下げて来た事を思う。

3つの劇場で、計6回の舞台挨拶が終了した。

本日、全国の劇場に足を運んでくださった
全てのお客さまに心から感謝を…。

まだ、もうしばらく、走らねばならない。
独立プロの自主配給は、走りやめたら終わりである。
作品が「うまれる」場を、押し広げていかねばならない。

明日はTKPシアター柏にて、舞台挨拶。
佐野史郎、高岡蒼佑が登壇する。

そして15日はヒューマントラストシネマ有楽町にて
「千年の愉楽」女優陣たちの女子トーク。
原田麻由、片山瞳、月船さらら、安部智凜

まだまだ、ゆけゆけ若松孝二!

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2013年03月09日 23:40に投稿されたエントリーのページです。

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