この週末は、全国各地でアツいイベントが繰り広げられた。
その皮切りになったのは、15日(金)の夜、
銀座のど真ん中、ヒューマントラストシネマ有楽町にて。
若松組初の企画
「若松孝二を支えた女優たち」による女子トークイベント。
「千年の愉楽」が初の若松組となった原田麻由、月船さらら
「海燕ホテル・ブルー」ヒロイン役だった片山瞳、
そして「実録・連合赤軍」以来、常連となった安部智凛の4人が
レイト終了後の夜のステージに登場した。
初の試みといえども、常に変わらぬMC不在の
登壇者による自然発生セッショントーク。
そして、全員が女性という事もあり、
若松組トーク初参加という初々しさも手伝って
普段見えてこない若松組の一面を語るエピソードが
次々飛び出し、場内に何度も笑いが起こった。
各自の胸の中にあった若松組、若松孝二は、
予定の30分では到底話しきれないものだった。
トップシーン、階段を駆け上ってくるミツの芝居を
何度も怒鳴られ、「こんな最初から、監督をガッカリさせてしまったら
どうしよう」という激しい動揺の果てに、
監督から「もう、いいや」とまで言われた原田麻由。
その直後に監督が近寄って来て、この作品におけるミツについて
あるいは存在を演じる事についてなど静かに語り
「じゃあ、もう一回やってみるか」とやり直しをさせてもらって
とうとうOKの一言がもらえたという、自分の初日の衝撃を語った。
片山は、「海燕の時は、主演の自分にカリスマ性をもたせるために
一切怒ってくれなかった監督に、とうとうこの現場で
タコ!イカ!と蘭子を演じる怒鳴られた事」を嬉々として語る。
片山は、監督が亡くなる直前に参加していた釜山国際映画祭に同行。
現地で「アジア映画人賞」を若松孝二が受賞する様を見ていて
「監督が格好良すぎて、泣いてしまった」事を告白。
若松組初参加ながら、堂々たる体当たり演技で
若松監督を唸らせた月船さららは、
「若松監督はとってもシャイで、自分の出番前なんか
ほとんど目も合わせようとしてくれなくて、
自分から、なんとか監督の視界に入って行こうとした。
でも、とっても恐ろしい現場と聞いて覚悟していったけれど
全然怒られる事もなく、思い出すのは、全裸で演じ終わった後に、
毛布をかけた自分の傍らに来て、
「ありがとうな、ご苦労さんだったね」と声をかけてくれた優しさ」。
唯一、「レンセキ」から若松組にほぼフル参加してきた女優、安部は
「レンセキでは、チャラチャラした奴に出て欲しくないから
出たいなら作文を書いて来い、と言われた。
小学校の時の作文の残りの原稿用紙に「なぜ生きるのか」なんていう事を
書いていったと記憶してます。
オーディションでも、自分は「監督はなぜ生きているんですか」なんて事を
いきなり質問してしまったけれど、でも監督は、面食らいつつ一生懸命考えて
「そうだなあ……俺はやっぱり、映画をつくるのが好きだから生きてると思うよ」
と、とても真面目に答えてくださった。
今回の現場では、今までで一番怒られて、一番心細かった。
「役者をやめろ!」が5回、「へたくそな芝居しやがって!」が5回
「二度とお前は使わねえぞ!」が1回……もう二度と監督の作品には出られないのか
と思っていたら、全然違う形で、ほんとに最後になってしまって…。」
といった監督との関わりや、レンセキで、
「私たち下っ端兵士は、みんなで泊まり込んでいた下宿先でも
幹部が集まるロビーのストーブの廻りには入っていけない空気でした…」と
かつてのロケ現場の日々をも語った。
父親の原田芳雄氏と若松監督との付き合いが長かった原田麻由は
ヨチヨチ歩きの赤ちゃんの頃から若松孝二に可愛がられた間柄。
「ずっと、監督には、お嬢、お嬢と呼ばれていて」といったエピソードに
他の3人からは「いいなあ、羨ましいなあ」といった声も。
それでも、4人が、互いに補い合い、相手のエピソードを引き出し合いながら
トークを進めていく様子、お客さまをいかに楽しませようかと
心を砕いている様子、そして、監督の代わりとなって、片山が
ガイドブックを片手に「ここには、監督の思い、出演者の思いや
いろいろな方たちの作品への言葉が…」とアピールすると、
安部が「もしよければ、ではなくて、ここにいらっしゃる方全員
必ず、お買い求め頂きたい……」と言葉を足して場内を笑わせるなど
4人の息のピッタリ具合、気持ちの寄せ合い具合に感動する程の
濃密かつ軽快かつ心地良い笑いの30分となった。
若松組を支えた女優たちは、やっぱり女っぷりがカッコイイ!と
改めて4人に惚れ直したレイト&トークとなった。