10月12日(土)下高井戸シネマにて
特集 若松孝二監督一周忌特別企画
"時代を撃ち続けた表現者 人生最後の5本"
「千年の愉楽」と近作の二本立て上映がスタートした。
初日の昨夜は「海燕ホテル・ブルー」との2本だて。
「海燕」のヒロインかつ「千年」で遊女蘭子を演じた片山瞳さん、
「海燕」で仲間を裏切った過去を持つ男を演じたウダタカキさん、
「千年の愉楽」で後家の初枝を演じた安部智凛さんの3名が
上映後トークを行った。
実はウダさんと安部さんは、「実録・連合赤軍」で
内縁上の夫婦、吉野雅邦さんと金子みちよさんを演じている事もあり
気心の知れた同志との再会、事前の打ち合わせも何もせず
いきなり壇上にて、3人のトークセッションがスタートした。
「海燕」ではヒロインとしてとても大切に扱われたという片山さん
一方、初の若松組の現場で、撮影初日から怒られ続けて
役を降ろされるのではないか、と追いつめられたという安部さん。
ウダさんも、女優2人から若松監督のエピソードや印象を引き出そうと
質問を重ねつつ、自身の体験を語った。
次第に会話は、いかに現場での監督が理不尽だったかというエピソードに花が咲く。
監督の意見に沿って使っていた衣装や髪型や小道具について
2ヶ月以上に及ぶロケの後、クランクアップ直前になって
「かっこつけてこんな色の服着やがって!」
「なんだ、こんな坊ちゃん刈りしやがって!」
「眼鏡でお前の目が見えねえんだよ!なんで眼鏡なんかしてんだよ!」
「ああいうのが、僕は本当にいやだった!」と苦笑しつつ、ウダさんは
「レンセキも三島も、作品となったものを見た時に
青春映画になっている事を感じて、ものすごい違和感が残ったんです。
この事を、青春の物語にしてしまっていいのか、と。
僕自身の中に、それは未だに解消できないものとして残されている。
それでも、監督は結局、常に、お前らはそれでいいんだ、という事を
言い続けていたんじゃないか、と。善とか悪とか関係なくて、
お前らがそれをやりたいと思ったんだったら、それでいいんだ、と
若い奴らの全面的な理解者であろうとしたんじゃないかと思った」と語った。
「そういう一面もあるし、『海燕』や『千年』では
監督は母性的なもの、女性へのあこがれや優しさを全面的に描いていて
それも若松監督だったと思う」と片山さん。
「男だったな、と思うんです。若松さんは。
理不尽さも含めて、ほおっておけなくなるような男の人でした。
昨年の釜山映画祭を監督と共に行って、それから1週間後にいなくなってしまった。
今年も釜山映画祭は、あの時の監督との時間をたどる旅でした」
人生を賭ける程の意気込みで「実録・連合赤軍」から
若松作品に挑み続けて来た安部さんは
監督の死後、その事を乗り越えられずにもがいていた時
共演者から「お前、今は辛くてたまらないだろうけれども
3年は続けろ、それが、若松監督への仁義じゃないか」といわれ
今、自分が投げ出してしまったら若松監督から学んだ事は無になる
それであれば、役者を今は続けて行くべきだと決意した事を明かした。
お客さんになんとか楽しんでもらおうと
3者3様に頑張ったトークは、臨場感たっぷり
聞き手も語り手と一体になってハラハラしたり泣き笑いしたり
あっという間の50分だった。
若松監督がこの場にいたら、決して口からは語られる事のなかった
エピソードの数々が飛び出した。
理不尽で、かんしゃく持ちで、でも、美味しいものを作って食べさせたり
みんなの喜ぶ顔を見るのが大好きだった監督。
思い出す事は美しい話ばかりではない。
笑い話、腹が立った現場でのあの瞬間この瞬間。
それでも、残した作品、私たち一人一人に突きつけた監督の思い
それらを、スクリーンを通して、あるいは作品を共有した人との再会を通して
若松孝二は、昨夜も確かに、あの場にいた。
本日は「キャタピラー」との二本立て。
寺島しのぶさん、大西信満さん、カメラマン辻智彦さんのトークです。
15時20分〜上映スタート。
劇場にて、お待ちしております。
また、本日は函館映画祭主催「若松孝二追悼上映」
赤煉瓦倉庫にて上映中。
トークゲストは若松監督の盟友で北海道出身の
鉄のゲージツ家KUMAさんこと篠原勝之さん。
先ほど、無事、一回目の上映トーク終了しました。
本日、合計4回上映予定です。
若松孝二という人を世界が喪って1年。
若松孝二に託された最後の現場、というような思いを抱え
それぞれの地で一周忌追悼上映が行われています。